MONSTERの概要と登場人物

 
1986年、天才的な技術を持つ日本人脳外科医・Dr.テンマは、ハイネマン院長の娘エヴァと婚約し、ゆくゆくは外科部長から院長という出世コースを掴みかけていた。医師として漠然とした疑問を感じつつも、深く考えることなく手術を重ね、研究に打ち込んでいた。
そんなある日、西ドイツ(当時)・デュッセルドルフのアイスラー記念病院に、頭部を銃で撃たれた重傷の少年ヨハンが搬送されてくる。Dr.テンマは、院長の命令を無視してオペを担当し、ヨハンの命を救う。しかし、院内の政治力学によって、テンマの順風な状況は一変し、出世コースから転落する。そんな中、院長、外科部長らの殺害事件が発生。同時に、入院中だったヨハンと双子の妹が失踪する。
1995年、外科部長として職務に励んでいたテンマの前に、美しい青年に成長したヨハンが現れる。テンマの患者ユンケルスを目の前で何の躊躇もなく射殺し、過去の殺人を告白するヨハン。自らの責任を感じたテンマは、怪物ヨハンを射殺するために、ヨハンの双子の妹アンナに会おうとする。殺人犯の濡れ衣を着せられ、キレ者のルンゲ警部に目をつけられたテンマは、ドイツを逃亡しながらヨハンを追跡するのであった。

天馬賢三(てんま けんぞう / ケンゾー・テンマ)
声 - 木内秀信 / 幼少期:小野未喜
本作の主人公。ドイツ・デュッセルドルフのアイスラー記念病院で働く日本人脳外科医。1958年1月2日生まれ、神奈川県横浜市出身。実家は市有数の総合病院を経営し、父親は院長(※ドイツでの周囲の人物に対しては「小さな病院の開業医」と話していた)、母親は元医学雑誌の編集者。異母兄が二人いる(※長兄は銀行員、次兄は医者であり無医村で医療活動中)。デュッセルドルフ大学医学部卒。日本で通っていた学校は、小・中学校は公立、高校・大学は名門私立校に進学し、医学部に入学する。“天才”と周囲の誰もが認めざるを得ない程の手術の腕を持っている。頭脳明晰で社交性も富んでおり、周囲の誰からも慕われる存在。集中力が高く、銃の技術もヒューゴー・ベルンハルトに満点と評された。仕事に対しても真面目で、人を助けることに人一倍の情熱と責任感を持っている。そんな人柄から、患者の誰からも慕われる。
1986年、ハイネマン院長からの業務命令を医学的倫理の観点から無視し、先に運び込まれていた「強盗事件」の被害者(ヨハン)の手術を執刀。9年後、ヨハンが殺人鬼であったと知り、彼を怪物化させた事に、深い負い目を感じ苦悩する。そして、ヨハンが行った殺人の容疑者として指名手配されながらも彼を抹殺する為、追跡の旅に出る。ルーエンハイムの事件後、ルンゲ警部の証言などによって無事無罪が証明され、その後は、再び病院内で出世するものの、自ら退職し国境なき医師団に参加した。
ヨハン・リーベルト
声 - 佐々木望 / 幼少期:上村祐翔
本作のキーパーソン。金髪碧眼、完璧な頭脳と美貌を持つ。テンマが追い続ける、人並外れた頭脳とカリスマ性を持つ“怪物”。1975年5月生まれ。子供の頃から驚異的なカリスマ性を持ち、天才的な洗脳者にして扇動者。幼い頃から人の心に入り込み、相手を思いのままに操る術を備えていた。人の命を何とも思っていない、冷酷無比な殺人鬼。殺人の手段もまちまち。特にターゲットへ何らかの深い思い入れがある場合は、じわじわと真綿で首を絞めるように周到な計画で追い詰めていく。父親はドイツ系チェコスロバキア人の士官候補、母親はブルノ大学で遺伝子工学を学んだ才女。両親の出会いはフランツ・ボナパルタの実験による意図的なもの。実験から逃れた母親と妹(アンナ)と共に、プラハの「3匹のカエル」の家で暮らす。数年後、ボナパルタにより妹が“赤いバラの屋敷”に拉致されるが、実験の途中段階で彼女は逃がされ、母親は2人を置いて失踪する。妹の話を聞いてボナパルタの実験の記憶を共有、そのころから次第に、絵本『なまえのないかいぶつ』の怪物と自分を重ねる。アンナと共に、チェコを逃亡するも国境付近を彷徨い、瀕死の状態になっていた所をヴォルフ将軍に発見される。ヴォルフ将軍によって入所させられた施設「511キンダーハイム」を、教官や生徒達を扇りたてて殺し合わせることで崩壊させる。アンナと共に東ドイツ貿易局顧問、リーベルト夫妻の子として西ドイツに亡命。リーベルト夫妻を殺害した際にアンナによって頭部を撃たれるが、搬送された病院でテンマによって命を救われる。その後、命の恩人(テンマ)の恨み言を耳にし、テンマが口にした病院の人間を毒殺すると、アンナと共に忽然と病院から姿を消す。そして9年後、再びテンマの前に姿を現す。
病院から失踪後も、それまでと同様行く先々で養父母となっていた夫婦や老婦人を殺害していった。また、15歳にしてマネーロンダリングを行う「闇の銀行」の頭取として君臨し、突如姿を消すことで裏社会に大きな混沌を巻き起こしたと言われている。その後は母親の親友(マルゴット)を端緒に、経済界の大物(シューバルト)の周囲の人間を殺害していき、彼に成り代わろうとするが、絵本『なまえのないかいぶつ』を読んだことで心変わりし、記憶の彼方にあった自らのルーツを追い始める。自分の中にあると思っていた「かいぶつ」は実は外側にあり、フランツ・ボナパルタであったと気づく。
プラハの「3匹のカエル」の家で暮らしていた頃、母親にアンナと見分けがつかぬよう女装させられていた。青年に成長してからも再三に亘りアンナ・リーベルトを名乗って女装し、相手から情報を引き出したり殺人を行う際などに利用していた。その姿はニナと瓜二つで、スーク刑事に思わず一目惚れさせるほどの美しさだった(唯一スークの母親には、男と見抜かれていた)。
ボナパルタが余生を過ごしていたルーエンハイムにて、大量殺戮事件を企て実行するも、頭部を撃たれる。テンマの執刀する脳外科手術により再度命を救われ、意識が戻らぬまま病院に入院していたが、テンマが見舞いに来た後姿を消す。
ニナ・フォルトナー / アンナ・リーベルト
声 - 能登麻美子 / 幼少期:塚田真依
ヨハン・リーベルトの双子の妹。1975年5月生まれ。幼少時はボナパルタの実験から逃げ出してきた母と、ヨハンと共に、プラハの「3匹のカエル」の家で暮らす。数年後ボナパルタが、双子の内1人を拉致しに来た際、母親の選択で“赤いバラの屋敷”へ連れて行かれる。その後、母親は失踪。“赤いバラの屋敷”から逃亡し、兄と共にチェコを逃亡するも国境付近を彷徨い、瀕死の状態になっていた所をヴォルフ将軍に発見される。ヴォルフに名前を付けられた2人は、西ドイツへ亡命した貿易商のリーベルト夫妻に引き取られる。兄が夫妻を殺害した光景を見た際、今まで親切にしてくれた人々の死はヨハンの仕業であると知り、恐怖と怒りに打ち震える。そしてヨハンの指示通り、その額に銃弾を発射、銃の指紋を拭いて窓から投げ捨てる。2人はアイスラー記念病院に収容されるも、茫然自失になった状態で病院を失踪した。その後、養父母フォルトナー夫妻に引き取られ、20歳になるまで育てられる。平穏な家庭で過ごし平凡だが楽しい大学生活(ハイデルベルク大学法学部在籍)を送るも、幼少時の記憶はなく、フォルトナー夫妻の実子だと疑わず生活していた。夫妻が殺害された際にテンマと出会い、殺人を繰り返す兄を食い止める為、大学を休学。追い続ける過程で次第に記憶を取り戻していく。
学業は常に優秀で、性格や思考は兄とは正反対。怒りに駆られた時の眼は、兄を彷彿させる。図書館で命を救われて以来、テンマに好意を寄せている。合気道の経験があり、道場では一番強かった様子。19歳の時点では検事志望だったが、一連の事件後には弁護士を志望する。
エヴァ・ハイネマン
声 - 小山茉美
アイスラー記念病院院長の娘。テンマに愛憎両方の感情を持つ屈折した人物。テンマの元婚約者で、テンマが院長命令を無視してヨハンの手術を行った為に婚約を解消する。性格は高飛車で傲慢。一度失敗をすると立ち直る力を持っておらず、自暴自棄に走りやすく精神的にも脆い。そのため、日常的に昼間からウォッカなどの強い酒を飲むなど、アルコール依存症である。人一倍寂しがり屋だが、素直に人に甘えられない。テンマの無実を知っていたが、自分の人生を台無しにしたとして彼に激しい恨みを持つ。その一方で彼のことを忘れられずにいる。テンマに振られてからは、酒浸りの日々が続いている。その間3回結婚したが全て離婚している。その後、ユンケルス殺害事件で真犯人・ヨハンの姿を見ていたことから、ロベルトに命をつけ狙われる。チャペックの依頼でヨハンの首実検を行なった後、用済みとして始末されかけるが、マルティンの命を賭けた行動により逃がされる。マルティンの死を契機に酒をやめ、これまでの行動を深く悔いて、ライヒワインの元に庇護されテンマの無実を証言。全てが落着した後、キッチン・コーディネーターとしてデュッセルドルフで新たな人生を歩む。
ハインリッヒ・ルンゲ
声 - 磯部勉
BKA(ドイツ連邦捜査局)警部。局きっての敏腕で、今までに解決できなかった事件はないと語る。驚異的な記憶力を持ち、キーボードを打つ仕草をすることで頭の中のコンピュータへ入力し、いつでも完璧なデータを取り出す事ができる。そして詰め込まれた客観的事実から、犯人の気持ちになりきり犯行を予想していくという主観的な推理によって、犯人の動機や殺害方法を導き出す。一人で旧チェコスロバキア秘密警察のボスに会いに行くなど度胸も据わっており、ロベルトと互角に渡り合うなど銃及び格闘の腕も確かなもの。執拗な捜査姿勢と、単独行動主義な性質から、周囲と齟齬が絶えず衝突も度々起こす。妻と娘がいるが家族関係は希薄で、娘の妊娠にさえ気づかなかった事を機に愛想を尽かされ逃げられる。さらにドイツ民主党候補ポルツマン議員のスキャンダルを深追いし過ぎて、その議員の秘書を自殺に追いやり、警察署内での地位も失う。
アイスラー記念病院でヨハンが起こした殺人事件では、犯人をテンマとみなし、ヨハンをテンマの二重人格の一つであると結論付けるが、事件の真相を次第に追いつめていく内に、ヨハン・リーベルトの存在を確信し始める。ヨハン誕生の鍵を握るフランツ・ボナバルタを追い、ルーエンハイムへ。その町で再会したテンマに謝罪し、ヨハンの手による殺戮を食い止めるため、殺戮の実質的な指揮者ロベルトと激しい死闘を繰り広げた。事件後、警察大学の教授になり、娘とは電子メールで会話をするようになった。欧州刑事警察機構行動科学課特別顧問に任命されている(課自体は未創設)。
ヴォルフガング・グリマー / ノイマイヤー
声 - 田中秀幸 / 幼少期:河原木志穂
フリージャーナリスト。1954年生まれ。東ドイツに存在していたと言われる謎の孤児院・511キンダーハイムで行われた非人道的な教育等を追究している人物。ドイツ統一前はジャーナリストという表向きで、世界各地でスパイ活動をしていた。自身も511キンダーハイム出身で、14歳以前の記憶が殆ど無い。名前はその孤児院で付けられたもので、本名は不明。普段は笑顔で、一見人が良さそうだが、自分の感情を自然に表現することが出来ず、日常的な場面での表情は、状況に応じてどのような表情をすべきかを学んだ結果でしかない。
スパイ時代に妻子を持つが、息子の死を機に家庭が破綻。息子の死を前にどう反応すべきか分からない彼に、妻は「あなたの心の中には何もない」と言って去っていった。窮地に陥ったり激しい怒りに駆られると、突如として痩身の外見からは想像もつかない超絶的な力と凶暴性を発揮し、敵対する人間を殴り殺す。正気に戻った時、その記憶は無い。自身は、孤児院で昔見たアニメになぞらえて、この別人格を“超人シュタイナー”と呼んでいる。ボナパルタによると一つの症例で、この症状が見られた子供の殆どは自殺した。
チェコで511キンダーハイムについて独自に調査を進めていたが、ヨハンの妨害によりその核心には後一歩というところで届かなかった。その過程でヨハンによる一連の殺人事件に関わり、その容疑者となっていたスークの疑いを晴らすため、自分が真犯人であるとの手紙を送り、警察に追われる身となった。テンマと別行動をとってからは、独自にフランツ・ボナパルタの調査を進め、その所在を突き止めることに成功。ルンゲと同時期に、ルーエンハイムでボナパルタ本人を発見する。グリマーはボナパルタを裁きの場に引き出す為、町で虐殺を繰り広げるヨハンやその部下達からボナパルタを守ろうとする。殺し屋達相手に説得も試みるが、少女が射殺されるのを目の当たりにし、怒りを爆発させる。結果、“超人シュタイナー”ではなく自らの意思でヨハンの部下達を倒すが、自らも瀕死の重傷を負う。駆けつけたテンマとボナパルタの前で、失われた感情を取り戻し、息を引き取る。その死を見てボナパルタは過去に自分が行った行為を涙ながら深く悔いた。
ディーター
声 - 竹内順子
511キンダーハイムの元スタッフだった里親(ハルトマン)に虐待を受けていたところを、テンマに助けられた少年。テンマやニナを慕って常に旅に同行する。フランクフルトではトルコ人街を火災から守るため奮闘した。サッカー好きで、テンマからもらったサッカーボールを常に持っている。